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美味酒録

シングルモルトとラム酒を主に、一杯ごとに感謝しながら記事にします。最近は専ら古いピートの虜。こういうふうに、美味しく飲んだ人がいると言う記録。

Signatory Vintage Silent Stills Glenlochy 1965 -1997 32yo #1528 

シグナトリー サイレントスティル
グレンロッキー 1965-1997 32年

47.9%
#1528


 
シグナトリーの閉鎖蒸留所をボトリングしたシリーズ、
サイレントスティルから、グレンロッキーの1965ビンテージです。

北西ハイランドのフォートウィリアムに1897年に設立されたグレンロッキー。
経済不況の影響も受けてかオーナーが度々変わっていますが、1965当時はDCL傘下にあったようです。
1983年に、他の多くの蒸留所と共に
この蒸留所も閉鎖されています。



ミニボトルがサイドについたこのシリーズ。
以下、開栓1ヶ月弱のフルボトルを
ティスティングコメントとして記載致します。

香り立ちは繊細できめこまやか。
洋梨ジャム、白餡、焦がしオークに
僅かなピートが乗っています。
ゆっくりと鼻腔を通すと
レザー、オランジェットが鼻の奥で交わります。

口にすると想像よりも甘みが強く、
少しワクシーな要素もありますが、
依然として繊細で綺麗です。
バニラ、油状ワックス。まくわうりの内部の甘み。
70~80年代のクライヌリッシュに感じられるような、整ったワクシーさで、
嫌味な要素はありません。
香りから引き継がれ、甘いジャスミンティーや無花果の葉を思わせる緑色の要素もどこか、
口蓋に見え隠れし
それがスパイスとなり、
味わいを引き締めます。

余韻は程よい長さで、
味わいが緩急を伴いながら、
そのまま続くような印象。
ピート感が少しだけ甘やかに引き延ばされ、
全体の魅力を引き上げてくれます。

グラスの中で少し時間が経ちますと、
香りがガラリと表情を変えました。

ザラメ糖を焦がした風貌、
淑やかな重心の下がり、甘やかなお香のような
妖艶な香り立ち。
途端に一段階官能要素を纏った赤紫色の、
しかし透明感のある果実。

舌あたりはやはりクリーミーでいて棘がなく、
ワックス状な要素が一歩下がった代わりに
灰っぽさや、憂いのあるピート感のある煙たさ、古酒らしいけむやかさが出てきました。
余韻にまでそれはうつろいゆき、熟れ熟れになった果実と合わさることで
より一層微睡んだように、深みを増してくれました。





ミニボトルを飲んだ際に、説得力のある美味しさのある印象があったので、
開栓を楽しみにしていたグレンロッキーです。
しかし何故かフルボトルの開けたては余韻がだれているというか。味が長続きしないものでした。
美味しいことには間違いないのですが、
期待値には一段階及ばず
まぁ、気長に向き合ってみるかな…といった感想でした。

ミニがよかったので、単に開いてないだけ、開くと良くなるのではと信じて待ちました。
開栓し、10日程度でミニボトルの印象に近づき、
1ヶ月弱頃でしょうか…

カラメリーで淑やか、少し灰っぽさと熟れた果実。

「あぁ、こうでなくちゃ!ありがとー!よかったー!買ってよかったー!」
と、思わず笑みが溢れました。
意外と香味の開花が早く感じましたが、しかしそれもグラス内での変化でしたので、
まだポテンシャルは秘めていそうです。

開栓後、この液面段階(写真下)を
今回ティスティングコメントとして
上記記載致しました。










R5.7



改めてこのボトルに対して思うこと。
想像以上に、深みがあって良い、ということです。


70年代、80年代でもシグナトリーからはグレンロッキーの瓶詰が数多くあります。

総じて、グレンロッキー甘露 というであろうか、
テラテラとした甘やかでキラキラした香味。
林檎や洋梨のカラメリゼと甘草…のようなところが共通しており、勿論これらも良いボトルです。
楽しんで飲め、私はこのテラテラとしたカラメルのようなロッキー香味が大好きです。70.80年代は、
どちらかというと飲み口は軽やかでしょう。

このサイレントスティル65も
樽元は同じシグナトリーです。
しかし上記グレンロッキーの特徴を持ちつつもそれらだけが主張するのではなく、
更に奥行きがあり、
土っぽいピート感と共鳴しています。
ハーバルで滑らか、だけれど、腹腔に響く。
度数は優しいんですが 余韻は力があります。

ひさしぶりに、じっくり1杯向き合いました。
好きなボトルです。
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